社会保障制度を把握し保険料の無駄を改善
今回は健康保険の高額療養費制度についてまとめてみました。
“健康保険の制度で、医療費が100万円かかったとしても自己負担額は約9万円!”
テレビから流れてくる医療保険のコマーシャルを見て「病気になって入院したらお金がたくさんかかって大変!」と思い込んでいる人も多いのではないでしょうか?
しかし、実際のところ医療費はどれぐらいかかるものなのか?というところですが、現状、健康保険の制度によって、かかった医療費に対して自己負担額の上限は(70歳未満で一般的な収入の方の場合)
8万100円+(かかった医療費-26万7000円)×1%
で済むことになっています。例えば、医療費が100万円かかってしまった場合の自己負担額は
8万100円+(100万円-26万7000円)×1%=8万7430円
つまり、100万円医療費がかかったとしても実際の自己負担額は8万7430円で済むことになります。(ただし、先進医療などの保険外治療や差額ベッド代、食事代等は適用外)また、直近1年以内に高額療養費が適用された月が3回以上あると4回目の該当からは上限額が更に引き下げられ、4万4400円の自己負担上限額に引き下げられます。
この高額療養費制度は1ヶ月毎(1日から月末まで)、医療機関別(さらに医科・歯科別、入院・外来別)に適用となっているため、例えば月をまたいで入院し高額な治療費が発生した場合にはそれぞれの月ごとに上限額が発生してしまいます。
そのため、例えばがんに対する高額の薬などを定期的に服用する場合などには、3ヶ月分まとめて処方してもらうなどして一月に医療費をまとめた方が自己負担額は少なく済みます。
また、かかった医療機関が複数ある場合や、同じ医療機関でも外来費と入院費が発生したり、また同一世帯で2人以上同じ月に医療費がかかった場合等はそれぞれ2万1000円以上の医療費が発生した場合であれば合算して申請することが出来ます。
つまり、A病院で診察してもらい、B病院で精密検査し、C病院で手術し、D病院で入院といった感じで複数の医療機関をまたいで、それぞれが2万1000円以上であれば合算して申請ができます。2万1000円未満の医療費の場合は合算されないので注意しましょう。
また、高額療養費による払い戻しは診察月から3ヶ月程度かかるため、無利子で8割相当額を貸りられる高額医療費貸付制度の利用や、限度額適用認定証というものを自分が加入している健康保険で事前に交付してもらっておけば窓口での支払いの時点で自己負担限度額内で済むので安心です。
※ただし限度額適用認定証は有効期限があるので原則1年毎の更新が必要
申請に必要なものは「領収書、保険証、印鑑、振込口座のわかるもの」。申請窓口は保険者によって異なるため保険証に記載されている保険者に問い合わせて確認。2年以内であればさかのぼって申請し、払い戻しが受けられます。
また、一部大企業等の健康保険組合によっては独自の付加給付として、1ヶ月の自己負担限度額が更に下げられる所もあるので、ご自身の会社の健康保険組合の制度について確認しておいた方がいいでしょう。
例えば1ヶ月の医療費が2万5000円で済むという企業もあります。目立たない隠れた福利厚生なので、確認した事によって民間で加入している医療保険について見直しをして保険料を下げる事ができたという方もいらっしゃいます。
社会保障制度をしっかり把握しておけば保険料のムダも無くなります。今回の高額療養費制度でいうと、高額療養費制度でカバーしきれない部分だけを民間の医療保険でカバーする(例えば、長期的な療養による収入減や生活費、差額ベッド代食事代、先進医療など)現状にムダがないかどうかFPに相談してみるのもいいかもしれません。
この記事を書いた人:
ファイナンシャルプランナー 松井大輔